+-----学園物語-----+

 


学園物語
 

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学園物語
−もしかしたら、肝っ玉の小さい方ならちょっとだけ背筋が寒くなるかもしれない話−
冷飯食太郎原案/カメレオン=ポナパルト著

−上の章−
 彼は、地下のちっこい石作りの部屋……『懲罰室』に居た。
 どっから見ても『チビ』としか言いようのない、あまりにも成長不足……牛乳を飲んでないせいか、それとも鉄棒にぶら下がらないせいか……の男の名は、村尾良昭、と言った。
 ちなみに、ここは現実世界とありきたりの剣と魔法の世界を掛け合わせたような何とも気が狂いそうな世界。こんな設定など、話の途中からふっ飛んでしまいそうなほど適当なのだが。
 彼、良昭は、なぜかこつこつとその石作りの壁を探っている。無論、あるわけのない逃げ道を探すためだ。
 彼は、単純である。
 
 良昭がぶちこまれたのは、2時間目に逆上る。
 「ということで、この精霊魔法の仕組みは、人間の精神力が……どーやらこーやら……」
ぐー、ぐー……
 汎世界魔法学園、横文字で書くとインターナショナル・マジック・スクールとなる……に、良昭がぶちこまれたのが今年の春。間抜けな良昭の親が「あなたのお子さんを、すばらしい大魔法使いに仕立て上げます!」という、新聞広告にまんまとひっかかったのだった。
ぐー、ぐー……
 ちなみに、日本の汎世界魔法学園は、劣等生のたまり場である。こんぢょーのない奴、学ぶ気のない奴、親にケツひっぱたかれたやつ、同じく勘当された奴。……人間の個性の多さだけは、事欠かないが。
ぐー、ぐー……
 彼はよく寝ている。熟睡というより爆睡というか。目がくさるぞ。
 「バカもんっ!そこっ!……はぁっ!」
 杖をふり上げた先生は、精神集中のみ……呪文も唱えずに……で、良昭の頭の上にバケツを出現させた。
 何をするかは、もうおわかりだろう。
どっばぁーっ!
 「ぶっ!ぶはぁっ!ハルマゲドンだ!洪水だ!最後の審判だ!うあっきゃーっ!」
 いきなり良昭は、教室じゅうを走り回り、半分の机とイスをつぶし、半分の生徒をつぶし(!)、先生をぶん殴ったあげく、廊下の外に出て行こうとした。
 「……ばかもんっ!教師を殴るとは何事だっ!懲罰室だ!懲罰!ええっ!?」
 首の後ろをつまみあげ、精霊魔術理論の教師は廊下へとあるいていった。
 良昭は、ネコかっ!?
 
 というわけである。自業自得である。
 だから単純だと言ったのだ。
 「良昭クン?」
こつこつ。こつこつ。ごつごつ。
 「ねぇ。昼ごはん、持って来たわよ。」
ごんごん。ごんぐん。ぼひっ。……へ?
 いつのまにか良昭の手は鉄扉のところへ行き、覗き窓からのぞく女の子の鼻面をなぐっていた。……やはり、大間抜けだ。
 「なっ……なによお……いきなしあたいの顔をぶんなくってぇ……」
 彼女は加藤真里という。日本人名がついてるがなぜかエルフ……らしい。耳がとんがってるしかそれらしいとこはないのだが。ちなみに、たいていのエルフはこの世界では呪文に長けているという。……ウソかもしれない。彼女は、クラスの最劣等生である。火の玉1つも出せない。
 「わわわっ……なんだよ真里じゃねーか。いきなし覗くな。その鼻っ柱も、自業自得だぜぇ。」
 「……そんなこというと、昼飯あげないから。」
ぴくっ。ぴくぴくっ。
 「くっ…くださいっ……お代官様……」
 「よしよし、わかりゃよろしい。」
 やっぱり単純だ。脳みその容積は1立方センチだろう。疑う方は一度こいつの頭を振ってみるがいい。からからと景気のいい音がするに違いない。
 「さて、と……」
 しょうがないな、と真里は思い、鉄扉の差し入れ口をはねあげ、メシを渡そうとした時……
 『では、お願いします。こっちの通路は、たしかだれもいませんから!』
 通路の奥のほうから声が聞こえ……
どっかぁぁぁぁんっ!
 大安売りできるほど盛大な爆発音が響き渡った。

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